差料
長曽祢虎徹
- 所有者
- 近藤勇
- 紹介
- 近藤斬込当夜の佩刀は自から「下拙の刀は虎徹故に候哉、無事に御座候」と吹聴しているが、これが偽物であった、いや本物であった、在銘であった、いや無銘であったと、今ではだいぶ話は喧しくなっている。
近藤がこれを手に入れたについて、金子子爵は、拝領というが、他に三説ある。
一、近藤自身が買った説 江戸の四谷に住んだ刀匠山浦清麿は、その手法が正宗に似ている上に、非常な利刀を制作したので、俗に四谷正宗と云われたが、勇がある刀屋から、この清麿作のものへ、例の偽銘作りの職人の手のかかった偽虎徹を買求めた。本人は偽物とも知らず珍重し、池田屋事変後に東下した時、わざわざこの刀屋を呼んで礼を云ったという話さえある。
一、鴻池家から贈られた説 新選組が京都から、大阪の警備に行っていた時のことである。勇は一夜隊士(沖田とも云い、土方だったとも云う)をつれて窃かに巡廻していると、鴻池家の塀を乗り越えて出て来た三四人の覆面の人物がある。誰何すると刃を向けて来たので、すぐにこれらを斬捨てて終った。覆面は、鴻池を脅して莫大な金と共に、何にか宝物を奪って去ったもので、鴻池はこの御礼として勇に所蔵の刀全部を差出して「お気に召したのをお選り下さい」という。勇は、自然気性のような鉄づくりのがっしりしたこの虎徹を選み「武州の武士が武州の鍛冶の刀をさして奮闘するは本懐である」と喜んだ。
一、斎藤一から貰った説 隊士の斎藤一が、京の夜見世でふとこの刀を発見した。無銘だが、如何にも無骨な味があって切れそうなので、値段を聞いたら三両だという。手許に金がないので一先ず屯所へ帰って、友人から用立ててもらって、翌夜また出かけてこれを買った。この話を近藤が聞いて「感心な奴だ」とほめ「どれ見せろ」と、一見すると、妙にこれに心をひかれて欲しくなった。「どうだ斎藤、俺に譲らんか、君は目が利くからまたすぐ掘出せる」というので、まだ二十二三だった斉藤は、そのまま隊長へ譲って終った。
和泉守兼定
- 所有者
- 土方歳三
- 紹介
- 和泉守を受領した十一代兼定は、銘も美濃二代兼定に倣って、定の中を「之」に切るようになった。
この会津十一代兼定の作柄は、身巾が広く巾に元先が無く、大鋩子で、大五ノ目刃を焼いた、新々刀風のもの、細身で中直刃を焼いた、古刀然としたもの、身巾尋常で三本杉刃を焼いた、伝統的な美濃関風のもの等あり、作域は広い。
土方歳三が、この十一代和泉守兼定を、二振使用したことは記録と現物により明らかである。
加州清光
- 所有者
- 沖田総司
- 紹介
- 池田屋騒動の時には、沖田は加賀清光を使用した。正式には、「加州金沢住長兵衛藤原清光」と言う。俗に乞食清光とも言う。出来がよく実践的な刀だが、清光は一種の偏屈者で、乞食小屋に出入りして鍛刀したと言われている。そういう刀を選んだ沖田自身も、ちょっと変わっていたのかもしれない。
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