小説


だんだら


新選組(上)


p.425 背の高い、やせて、もう五十近い武田観柳斎が、白装束の六部の姿に化け、背中に大きな天狗の面を背負っているのだった。 「なんだ、それは」 と、歳三が吹き出しそうな声をかけた。 「はあ、これは六部の姿ですが」 武田観柳斎はすました顔で答える。

出版社:学陽書房/発売:2002年/著者:村上元三

新選組(中)


p.106 「伊東君。もうとめても駄目だ。おれが出ればいいのだから」 「いや、それはいかん、局長。こういうところで」 「しかし、あの連中の顔を見たまえ。刀を合わせずに納まるわけがない。君たちは、手を出さずに見ていてくれ」 「そうは行かぬ。仕方がない、わたしも助成する」

p.297 「伏見へ参ってから、敵に備えるために編入した浪人たちが居りまする。それが、二、三、酒に酔って町民に迷惑をかけたようでございますが、それぞれに処置はとりました」 「処置とは」 「斬罪でございます」 平然と歳三は答える。 その顔つきから慶勝は、京で鳴らした新選組の土方歳三の実体をはじめて見たような気がした。

p.320 「土方さん」 周平は、ひくい、かすれた声で叫んだ。その唇の端から、たらたらと血が流れた。 「しっかりしろ周平君。いま手当をする」 「いや、わたしはもう駄目です」 つぶやくようにいって、周平は、 「父にお伝え下さい。周平は、最期まで戦ったと」 「周平君」 「近藤勇の名を恥ずかしめぬような」 そこまでいって周平は、歳三の腕の中に崩れてしまった。

p.451 「何かわしに話があるのか」 笑顔で聞くと、歳三はぐいと顔をあげたが、すぐに眼をとろんとさせて、 「ある、大いにある。だがおれはそれよりも近藤さんと枕をならべて寝たいんだ。十年も一緒に暮らしながら、一つ部屋に寝たことは二、三度しかなかったからなあ。それが、兄貴夫婦は哀れな奴さ、全く解らん。それがおれには、涙が出るほどかなしいんだ」

出版社:学陽書房/発売:2002年/著者:村上元三

新選組(下)


p.12 「近藤さんたちも江戸で甲陽鎮撫隊というのを作って、やはり甲府へ進んでいるようなことを、さっき、ちらりと耳にしましたけど」 「近藤さんたちが」 と守之助は、ふっと眉を曇らせて、 「新選組とは別の隊なのだね」 「新選組の生き残りも加わっているから、戦う相手としては屈強だと官軍の兵士が話していました」

p.192 「僕は君に、つまらん死に方をさせたくないのだよ。京で鳴らした近藤勇が、人に知られん所では死なれぬなどと意地を張って、近藤勇をこんな所まで引きずってきた、と人に悪口いわれてもいい。僕は君に、もう一度花を咲かせてやりたい。なあ、わかってくれるだろう」

出版社:学陽書房/発売:2002年/著者:村上元三

新選組


 

出版社:河出書房新社/発売:2003年/著者:村山知義

新選組(上)


pp.100-101 「一つおれが行って見て来ようか」 井上源三郎が言いだした。井上は試衛館での最古参で道場ではあまり目立たないが、博奕には目がない。博才があり、江戸の賭場に出入りして、張り取ってきた金で道場の火の車財政を救ったことが度々ある。試衛館の貴重な才能であった。

pp.351-352 沖田の刀の鋩子が折れ、永倉の刀も折れている。一見人剣共に無傷なのは近藤だけである。周平の姿は見当たらない。 「逃がすな」 階下に合流した四人目がけて志士勢が一挙に包囲の環を縮めてきた。 「おれたちが逃げるだと」 朱にザブ漬けになったように全身に返り血を浴びた近藤が、悽愴な笑みを頬に刻んだ。 「藤堂と総司、しばらく外に出ていろ。ここはおれと新八でしのぐ」

p.353 「二階にいるのか」 谷が槍をしごいて階段を駆け上がろうとした。階段の上に一人の志士が立ち塞がり、谷にたいして刀を振りかぶった。 「しゃらくせえ」 千石ものと噂された谷の槍の前に、階上の志士はなにを血迷ったか刀を大上段に振りかぶった。一瞬のにらみ合いの後、谷が猛然と突き上げた。

出版社:朝日新聞社/発売:1994年/著者:森村誠一

新選組(下)


p.70 天満屋事件では、土佐側は中井庄五郎が討ち死にしたほか全員負傷、新選組は宮川信吉が討ち死に、梅戸勝之進が重傷を負った。宮川の遺族に対しては紀州家から四十二両という半端な額の慰謝料が贈られた。隊士はこれを「死に料」と呼んだ。

p.105 すべての敵を倒した源三郎は地上に倒れている妻子の許に駆けつけた。家族の名を呼んで抱き上げたが、すでに三人ともこと切れていた。地上ではまだ息のある敵がうめき声をあげている。 「おのれ、許さぬ」 源三郎は敵のかたわらへ寄ると一人ひとりその生死にかかわらず、何度も止めの刀を突き刺した。

p.190 「おれは水葬にだけはなりたくねえなあ」 永倉が寒風に吹かれて寒気立った顔で言った。 「どうしてだい」 原田が問うと、 「泳げねえんだよ」 「馬鹿だねえ、死んだら泳ぐも泳がないもないだろう」 「ああそうか。しかし寒そうだな」 「それも死ねば関係ない」

p.350 「いかんな」 原田は眉をひそめた。鳥羽伏見の戦いでも火力の差が勝負を分けた。彼はアームストロング砲の殷々たる砲声が隊士の士気を阻喪させているのをなんとか食い止めなければならないとおもった。 「よし、あの大砲を分捕りに行こう」 「大砲分捕りですって」 買い物にでも行くような口調で途方もないことを言いだした原田に、隊士がびっくりしたような目を向けた。

p.409 仙台軍が平潟口や白河口で見せた腑甲斐なさは、列藩同盟の盟主として大きな失望をかったものである。 「大鳥圭介や旧幕府の連中も会津を見限って、いよいよ会津は孤立無援ですね」 「孤立無援ではない。おれたちがいる」 山口がたったいま政府軍兵士の血を吸ったばかりの愛刀にびゅっと素振りをくれた。彼の剣は会津へ来てからますます凄みを発揮したようである。

p.450 「アボルダージュ、突っ込め」 城兵がこの奇抜な攻撃に気づいたときは、攻城車がすでに迫っていた。城壁に達したところで攻城車の前扉が開かれて、土方を先頭に新選組がどっと斬り込んだ。白兵戦になると、修羅場を潜り抜けて来た新選組の敵ではない。城兵はさんざんに蹴散らされた。

出版社:朝日新聞社/発売:1994年/著者:森村誠一

新選組アンソロジー その虚と実に迫る(上)


 

出版社:舞字社/発売:2004年/編集:清原康正

新選組アンソロジー その虚と実に迫る(下)


 

出版社:舞字社/発売:2004年/編集:清原康正

新選組意外史


pp.10-11 駿河町奉行の職にあったが公職追放で小普請入りとなりそのときから、鳩翁を名のった。二千五百石のお旗本である。 その知行所が茨城県の当時水戸斉昭によって振興された私学校の一つである那珂湊文武館の近くにあったため、そこの塾生平間重助などが鳩翁邸の用心棒兼用人をしていた。

p.12 従来これを誤って、試衛館とかくが、衛ではなく誠であるらしい。 のち呉服店大丸で染めさせた羽織や旗も、「誠」の字だが、市谷柳町上高麗屋敷から移った牛込二十騎町道場跡は、維新の際に揚場町升屋酒店の所有となっているが、その土地元帳には、それははっきりと、 「旧試誠館あと」と、前中大総長升本喜兵衛氏の曾祖父の手で書きこまれている。

p.187 伊東甲子太郎の北辰一刀流は、そうした事大主義はとらない。飛び込んでゆき、 「覚悟ッ……」 手拭を首っ玉にまきつけた風采の者を、 「二つになれ……」と、真っ向う唐竹割りに肩先から斬り下げた。 そして返り血を浴びながら次の者を、 「……うぬもか」と胴斬りしてのけた。

p.203 「脱退とか、分離というのではなく、新選組を二つに分け、これまでの大公儀御用の方とは別個に、新帝御用の組をつくり、世の中がどちらへ転んでも、片方は助かるようにして置けば、もしもの際も残れた方が他を吸収でき、組の命脈が保って行けるという案ですが……ひとつ考えてみて頂けませんか」

出版社:作品社/発売:2002年/著者:八切止夫

新撰組一番隊


 

出版社:新人物往来社/発売:1974年/著者:童門冬二

新撰組一番隊 沖田総司


 

出版社:新人物往来社/発売:2004年/著者:結喜しはや

新選組遺聞


p.153 近藤斬込当夜の佩刀は自から「下拙の刀は虎徹故に候哉、無事に御座候」と吹聴しているが、これが偽物であった、いや本物であった、在銘であった、いや無銘であったと、今ではだいぶ話は喧しくなっている。

pp.155-156 近藤がこれを手に入れたについて、金子子爵は、拝領というが、他に三説ある。 一、近藤自身が買った説 江戸の四谷に住んだ刀匠山浦清麿は、その手法が正宗に似ている上に、非常な利刀を制作したので、俗に四谷正宗と云われたが、勇がある刀屋から、この清麿作のものへ、例の偽銘作りの職人の手のかかった偽虎徹を買求めた。本人は偽物とも知らず珍重し、池田屋事変後に東下した時、わざわざこの刀屋を呼んで礼を云ったという話さえある。 一、鴻池家から贈られた説 新選組が京都から、大阪の警備に行っていた時のことである。勇は一夜隊士(沖田とも云い、土方だったとも云う)をつれて窃かに巡廻していると、鴻池家の塀を乗り越えて出て来た三四人の覆面の人物がある。誰何すると刃を向けて来たので、すぐにこれらを斬捨てて終った。覆面は、鴻池を脅して莫大な金と共に、何にか宝物を奪って去ったもので、鴻池はこの御礼として勇に所蔵の刀全部を差出して「お気に召したのをお選り下さい」という。勇は、自然気性のような鉄づくりのがっしりしたこの虎徹を選み「武州の武士が武州の鍛冶の刀をさして奮闘するは本懐である」と喜んだ。 一、斎藤一から貰った説 隊士の斎藤一が、京の夜見世でふとこの刀を発見した。無銘だが、如何にも無骨な味があって切れそうなので、値段を聞いたら三両だという。手許に金がないので一先ず屯所へ帰って、友人から用立ててもらって、翌夜また出かけてこれを買った。この話を近藤が聞いて「感心な奴だ」とほめ「どれ見せろ」と、一見すると、妙にこれに心をひかれて欲しくなった。「どうだ斎藤、俺に譲らんか、君は目が利くからまたすぐ掘出せる」というので、まだ二十二三だった斉藤は、そのまま隊長へ譲って終った。

出版社:中央公論社/発売:1977年/著者:子母沢寛

新選組覚え書


 

出版社:新人物往来社/発売:1972年/著者:小野圭次郎

新撰組が行く(上)


 

出版社:集英社/発売:1994年/著者:童門冬二

新撰組が行く(下)


 

出版社:集英社/発売:1994年/著者:童門冬二

新撰組局長首座 芹沢鴨


p.211 鴨は、おのれもまた同じような立場にあることを知った。「わしが近藤であったら、わしを殺す」と呟く。

出版社:集英社/発売:1998年/著者:峰隆一郎

新選組血風録


p.190 土方は餅を箸でつまみあげて、あんた手を出しな、といった。餅をくれるのかと思って掌をさしだすと、土方は笑いもせず、「餅は私が食う。この一件に手を出してみろというのだ」

出版社:中央公論社/発売:1996年/著者:司馬遼太郎

新選組剣客伝


p.159 翌日、壬生の屯所に凱旋した永倉の姿を、八木為三郎が目撃している。 「永倉新八は右手に半紙でぐるぐる巻きにした曲がった刀の身を下げ、左手は手ぬぐいのようなもので包んでいて、それに血が真っ黒くにじみ出していました」 当夜の戦闘のすさまじさがうかがえる。

出版社:PHP研究所/発売:2002年/著者:山村竜也

新選組興亡録


 

出版社:角川書店/発売:2003年/著者:司馬遼太郎、他

新選組斬人剣 小説・土方歳三


p.181 周助のころはあまり繁昌しなかったのが、勇が主になると、若い者が増えたのは、やはり七十歳過ぎと三十歳前の若さの違いである。 剣道場などは、華やかで、活気に満ちていないと、弟子など集まるものではない。 道場全体が若返ったようになると、色気もついてくる。 武者窓からのぞく野次馬にも、女性が増えるし、なんとなく女たちが玄関前にうろうろするようになる。 土方歳三や沖田宗次郎などに何とかして近寄りたい女心がそうさせるのだ。

出版社:講談社/発売:1993年/著者:早乙女貢

新選組三番隊組長 斎藤一 二つの時代を生き抜いた「最後の剣客」


 

出版社:PHP研究所/発売:2003年/著者:菊池道人

新選組 試衛館の青春(上)


 

出版社:サンライズ出版/発売:2012年/著者:松本匡代

新選組 試衛館の青春(下)


 

出版社:サンライズ出版/発売:2012年/著者:松本匡代

新選組事件帖


 

出版社:文藝春秋/発売:1990年/著者:佐木隆三

新選組始末記


p.264 「拙者は筑波以来数度の戦闘に加わったが、今夜の如き激戦ははじめてである。殊に原田新井両氏の働きは物凄いものであった」

出版社:中央公論新社/発売:1977年/著者:子母沢寛

新選組出陣


 

出版社:廣済堂出版/発売:2014年/編集:歴史時代作家クラブ

新選組情婦伝


pp.219-220 「おれはとっくに、国を捨てちまった。おれの国は江戸さ」 「…………」 「侍になったとはいっても、松山藩の足軽くらいでは知れたもんだ。おれは江戸の町で武道にうちこむつもりだよ」 「そう……」 「こんなご時世だ、世の中いつひっくりかえるかわからねえ。一寸さきは見えぬもおなじだ。こんなときにたよりにできるのは、手前の腕だけだからな」

出版社:学習研究社/発売:2003年/著者:南原幹雄

新選組 新選組をつくった男たち


p.172 「官軍といったって、いろんな藩のよせあつめだ。あんたの顔を知ってるやつなどいやしない。あくまでも大久保大和でとおして、時間かせぎをしてくれれば、そのあいだに、おれは隊士たちをつれて、会津にむかうことができる」 勇は、思わず歳三を見た。歳三のいっていることは、自分のために、新選組の近藤勇という名も、武士としてのさいごの名誉もすててくれということだった。 「よし、わかった」

出版社:ポプラ社/発売:2003年/著者:三田村信行

新選組青春譜 勇と歳三と総司と


 

出版社:新人物往来社/発売:1994年/著者:森満喜子

新撰組隊長相馬主計の降伏


 

出版社:新風舎/発売:2004年/著者:石井勉

新選組 多摩の四天王


 

出版社:日本図書刊行会/発売:1993年/著者:宮本三郎

新選組探偵方


p.41 「やるのか、やらねえのか、はっきりしろっ」 総司は二人にむかって乱暴に一喝した。 「天誅っ」 「沖田、覚悟!」 それでも二人は懸命にむかってきた。 「うけてやろう、天誅を」 総司は余裕をもって一、二歩すすんだ。すでに敵をのんでいた。実戦の場数がちがうのだ。

p.156 「たのまれなくても、もう詮索にかかってますよ」 そういうと斎藤の顔がほころんだ。 「そうか、隊士が不審な死に方をすると、かならずおれがうたがわれる。近藤さんとか土方さんにたのまれて消したんじゃないかと」 うんざりしたように斎藤はいった。

出版社:双葉社/発売:1992年/著者:南原幹雄

新選組伝奇


 

出版社:勉誠出版/発売:2004年/著者:志村有弘

新選組 藤堂平助


 

出版社:文藝春秋/発売:2007年/著者:秋山香乃

新撰組捕物帖 源さんの事件簿


 

出版社:河出書房新社/発売:2005年/著者:秋山香乃

新選組の哲学


pp.97-98 「そのことを忘れてしまったのは私の不覚ですが、しかし、近藤先生、忘れさせてしまうようなよさが新選組にはあるんですよ。そうはおもわれませんか」 どういうわけか、近藤には、この日の武田が一番立派にみえた。というよりも、この男の人となりがわかってきたような気がした。

出版社:中央公論社/発売:1986年/著者:福田定良

新選組 幕末の青嵐


 

出版社:集英社/発売:2009年/著者:木内昇

新選組は名探偵!! タイムスリップ探偵団と幕末ちゃんちゃんばらばらの巻


 

出版社:講談社/発売:2008年/著者:楠木誠一郎

新選組 原田左之助 残映


pp.418-419 「二人とも卑劣な奴さ。裏切り者を殺った、それだけだ。武士の意地だ。戦には負けたが、武士の道だけは踏みはずさねえ。……だが、この士道の意地もこの辺で幕かねえ、これからはどうせ武士のいねえ世の中になる。屑にならなきゃ生きてゆけねえだろう」

出版社:学陽書房/発売:2001年/著者:早乙女貢

新選組秘剣伝(1)


 

出版社:学習研究社/発売:1996年/著者:瑞納美鳳

新選組秘剣伝(2)


 

出版社:学習研究社/発売:1996年/著者:瑞納美鳳

新選組秘剣伝(3)


 

出版社:学習研究社/発売:1997年/著者:瑞納美鳳

新選組秘帖


 

出版社:文藝春秋/発売:2005年/著者:中村彰彦

新選組風雲録 洛中篇


p.90 (すっかりだましこまれていたが、この人が山崎というお方に違いねえや) 全身が痺れるほどに感嘆したが、そこは油断せずに、階段をおりながら探りをいれた。 「ねえ、薬屋さん、あっしは肘を痛めちまったので、今夜はそろそろやすませていただきやす」 「それは困ったものやなあ」 「思うように肘がうごいてくれねえというのは……」 まだ、土方が池田屋に到着していない事実にかけた。

出版社:文藝春秋/発売:2004年/著者:広瀬仁紀

新選組風雲録 激闘篇


p.10 「女ッ、吐かんか」 大石は恫喝した。 「吐かねば容赦なく責にかけるぞッ」 後日、新選組で、人斬り鍬次郎と異称され、自身も、 ──人を斬るのは楽しみだ。 とうそぶいた男なだけに、嗜虐心が異常に強い。

p.90 「土方さんの流儀でいけば、喧嘩は気合いだからな。お手当がなけりゃ、喧嘩はできねえなどと、おれらが云いだしたりしてみろ。とたんに張りたおされちまうぜ」 「歳さんてえのは……」 ぼそっと近藤が云った。 「そういう男なのだ」

p.154 「切腹などをしたら、土方の思うつぼにはまるだけだよ」 うっすらと笑いながら、伊東は策を云った。 「隊士たちにまで、きみの意が奈辺にあるかを示すためには、局中次席のきみが新選組を脱走してみせることだ」

p.191 「何でも聞かせてもらうが、土方君。俺は不ざまに脱走をしそこねて、こうしてきみにひっつかまった」 「誰が不ざまなどと……」 剣戟を覚悟で大津宿で足を停め、追手と承知で階上から手をふってみせた山南を、不ざま、などと云う奴がいるわけがないではないか、土方は噴き上げるように云った。 「云うものかッ」 「きみにそこまで云ってもらえたのなら……」 会心の、といっていい微笑を、山南はうかべた。

出版社:文藝春秋/発売:2004年/著者:広瀬仁紀

新選組風雲録 落日篇


pp.158-159 「本音でなら、俺は、新選組に……」 絶句しかかった声を、藤堂はふりしぼった。 「惚れ抜いているのだ。近藤先生や土方さんの為なら、いつでも死ぬと決めていた」 「あなたという人は、藤堂さんッ!」 悲鳴に似た声になってしまった。 「誰にもまして、俺はきみが好きだ。この先どうあろうとも、兄弟も、同様だと思っていたい」 「私も……」

pp.159-160 「誓って云うぞ、沖田君」 藤堂も金打の仕種で応じながら、きっぱりと云いはなった。 「きみが土方さんの命をうけて、俺を斬りにきた時は、何の手向かいもせずに斬られると約束するぞ」 「そんな事はありますまいが、その時は存分に撃ちあいましょう。藤堂さんも、ご懸念はなしにしてください」 「俺が、きみにかなう訳がないから……」 にこっ、と藤堂が笑った。

出版社:文藝春秋/発売:2004年/著者:広瀬仁紀

新選組風雲録 戊辰篇


p.77 「われら新選組が市中巡察の途中としっての狼藉か!」 云い終わる前に、すらりと白刃を抜きはなって中段につけ、永倉は罵声をあびせかけた。 「そうと承知で、道をさえぎったのなら、遠慮するにはおよばねえよ」 にわかに伝法な口調になった。 「新選組の人の斬りようを教えてやるぜ。どこからでもかかってきやがれ」

p.95 何をうだうだ云っていやがるのだッ!! 相手の剣幕の凄まじさに小首をすくめてしまった沖田に、松本は容赦なしの声をあびせかけた。 「沖田君とて大御番士ではねえか、格式となりゃあ、そこいらの外様大名になんぞ……」 そこいらあたりを松本にすれば、近藤を送りに出た新選組の連中の耳にこそ聞かせておきたい。 「負けるものではねえぞ。此処に大名駕籠がすえられようとも、つまらねえ遠慮はするなッ」

p.123 山崎のあまりの剣幕に驚いた銃口が集中、轟発した。 数弾に射ち抜かれながらも山崎はなおも進み、さらに二人三人斬って落したが、さすがにそこまでで力が尽きて、大地にどうと倒れた。 島田が引っかつぐようにして後退したが、それほどの重傷にもかかわらず、山崎の呼吸が止まっていたというわけではない。 見事な山崎の勇戦に恩怨も忘れて、敵味方ともに感嘆の声を上げて賞賛し、薩長の陣営から一発の銃弾も島田の姿にあびせかけられることはなかった。 それを機に、土方は撤退を命じた──。

出版社:文藝春秋/発売:2004年/著者:広瀬仁紀

新選組風雲録 函館篇


 

出版社:文藝春秋/発売:2004年/著者:広瀬仁紀

新選組副長助勤 斎藤一


pp.255-256 「今度こそ、死ねるかもしれないなァ」 彼は甲斐々々しく出陣の用意を手伝っている妻にいった。 時尾は微笑んで答えた。 「斎藤一は不死身でございますよ。会津の仇を取ってきて下さいませ」

出版社:新人物往来社/発売:1998年/著者:赤間倭子

新撰組武勇列伝 蒼き狼


 

出版社:学習研究社/発売:2010年/著者:岳真也

新選組魔道剣


p.45 「ははあ、それで縁切りの安井金比羅宮に、こんな願いをしたわけですね。それにしても、薄気味悪い」 広瀬市之進が首をすくめてみせると、藤堂はとがめるような目をし、 「そんなことを言うもんじゃない、広瀬君。人には誰だって、事情ってもんがある。この女にしたって、なにも好きこのんで絵馬を吊るしたわけじゃあるまい」 「藤堂さんはお優しいんですね」 「ばかを言うな」

p.242 「死者の怨念が凝り固まって腫れ物になったとでも言うのかね」 「私は自分の信念に従って人を斬ってきた。だから、怨霊など少しも恐れてはいない。ただ、人はふとした隙に、気が弱くなることがあるでしょう。そうしたとき、この腫れ物を見ていると、むかし斬った連中の顔を思い出し、どうしようもなく辛気臭い気分になるんですよ」

出版社:光文社/発売:1999年/著者:火坂雅志

新選組密偵 山崎烝


 

出版社:廣済堂出版/発売:2002年/著者:島津隆子

新選組物語


p.64 新選組の浪士調役一つ橋脱藩大石鍬次郎は、人呼んで「人斬り鍬次郎」といった人物。大した使い手でもなかったが、近藤勇の気に入りで、新選組が手を下した所謂人斬りの中に、この鍬次郎の名の入っていないことは、先ず無かったといってよろしい。

出版社:中央公論社/発売:1997年/著者:子母沢寛

新撰組 物語と史跡をたずねて


 

出版社:成美堂/発売:1994年/著者:童門冬二

新撰組 山南敬助


p.217 「夜明けから女のところに通うなんざ、近藤さんらしいや。なあ」 土方歳三が低い声で山南敬助にささやいた。その土方歳三ですら、あるときは変な恋の句をたのしんでいたのを山南敬助は思い出し、 「みんな、人間なんだ……」 とつぶやく。 そう思うと、人斬り狼の群の新撰組が、なぜか懐かしくなってくる。

出版社:学陽書房/発売:2007年/著者:童門冬二

新撰組烈士伝


p.286 「なあに、心配はいらん。みろ、与六」松原は、正座したまま、足をはねあげて跳びあがり、宙でくるりと一回転して再び正座し、数度くるくるとその奇妙な動作繰り返して、「おれはこれほど喜んでいる。うそをついているのは苦しかったぞ」

p.294 「いいじゃありませんか、名前なんて、所詮符牒ですからね、誰をさしているかわかればいいんで、こだわることはありませんよ」

出版社:角川書店/発売:2003年/著者:津本陽、他

新選組列伝


 

出版社:新人物往来社/発売:2003年/著者:早乙女貢

新選組×坂本竜馬 ラブ・アンド・ピースぜよ。 坂本竜馬はジョン・レノン?


 

出版社:プロデュースセンター出版局/発売:2004年/著者:辻本颯

赤絵そうめん とびきり屋見立て帖


 

出版社:文藝春秋/発売:2011年/著者:山本兼一

あさぎ色の風


 

出版社:集英社/発売:2003年/著者:藤堂夏央

あさぎ色の風 きざはし


 

出版社:集英社/発売:2003年/著者:藤堂夏央

あさぎ色の風 くれない


 

出版社:集英社/発売:2004年/著者:藤堂夏央

あさぎ色の風 たまゆら


 

出版社:集英社/発売:2004年/著者:藤堂夏央

あさぎ色の風 とこしえ


 

出版社:集英社/発売:2004年/著者:藤堂夏央

あさぎ色の風 うたかた


 

出版社:集英社/発売:2005年/著者:藤堂夏央

油小路の血闘


 

出版社:小学館/発売:1999年/著者:安西篤子

一刀斎夢録(上)


 

出版社:文藝春秋/発売:2011年/著者:浅田次郎

一刀斎夢録(下)


 

出版社:文藝春秋/発売:2011年/著者:浅田次郎

いつの日か還る 新選組伍長島田魁伝


p.598 「おれがさような途を選んだならば、若くして賊徒の汚名のもとに死に、地下に眠っている友人たちはどうするのだ。死すべきところを生きながらえただけでも相済まぬことなのに、おれが、この島田魁がかつての敵になど仕えられるか!」

出版社:文藝春秋/発売:2003年/著者:中村彰彦

異聞・新撰組 幕末最強軍団、崩壊の真実


p.72 かれはこの壬生誠忠浪士組を、 「若者が、自分の夢を実現できる集団」 と見ていた。したがって、その性格付けがあまりきちんとされることには賛成できない。バラバラな考え方を持つ人間がまとまりもなく行動し、ある大きな枠の中で生きて行けば、次第にその性格が新しくつくられて行くだろうと思っていた。その結果が尊皇攘夷であればそれでもいいし、あるいは佐幕開国であればそれでもいい。

p.204 「おれは笛吹きだ。しかし笛の音がよくないから、あまり人が従いて来ない。わずかに平山ぐらいが従いて来る。他の連中は、自分を監視しているか、あるいは他のうまい笛吹きの方へ移ろうときょろきょろしている奴ばかりだ。というのは、俺が笛が下手だというだけではなく、どこへみんなを連れて行こうとしているのか、おれ自身がその方角がみつからないからだ」

出版社:朝日新聞社/発売:2003年/著者:童門冬二

色散華


 

出版社:講談社/発売:2008年/著者:岳真也

埋もれ火


 

出版社:文藝春秋/発売:2001年/著者:北原亞以子

王城の護衛者


 

出版社:講談社/発売:2007年/著者:司馬遼太郎

狼たちの挽歌 新撰組の若き獅子たち


 

出版社:文芸社/発売:2004年/著者:横須賀武弘

沖田総司


 

出版社:新人物往来社/発売:2009年/著者:大内美予子

沖田総司哀歌


 

出版社:新人物往来社/発売:1999年/著者:森満喜子

沖田総司・暗殺剣


 

出版社:廣済堂出版/発売:2000年/著者:加野厚志

沖田総司・非情剣


p.29 「いいだろう、任せる。決行日については、いずれ俺が指示する」 「わかりました。それから……」 「どうした。ほかに何か」 「じつは、まだ晩飯を喰ってないんです」 「けっ、密談の席で食い物の話とはな。だれも総司にゃ勝てねぇや。厨に行ってみろ、握り飯が残ってる」

出版社:廣済堂出版/発売:2001年/著者:加野厚志

沖田総司・魔道剣


 

出版社:廣済堂出版/発売:2001年/著者:加野厚志

沖田総司・獣王剣


 

出版社:廣済堂出版/発売:2001年/著者:加野厚志

京都魔性剣 姫巫女烏丸龍子


 

出版社:双葉社/発売:2004年/著者:加野厚志

池田屋の血闘 姫巫女烏丸龍子


 

出版社:双葉社/発売:2004年/著者:加野厚志

沖田総司おもかげ抄


 

出版社:新人物往来社/発売:1999年/著者:森満喜子

沖田総司幻歌


 

出版社:新人物往来社/発売:1974年/著者:森満喜子

沖田総司拾遺


 

出版社:新人物往来社/発売:2003年/著者:大内美予子

沖田総司 新選組きっての天才剣士


 

出版社:PHP研究所/発売:2003年/著者:松田十刻

沖田総司 血よ、花と舞え


 

出版社:学習研究社/発売:2003年/著者:岳真也

沖田総司 壬生狼


 

出版社:徳間書店/発売:2010年/著者:鳥羽亮

沖田総司 物語と史跡をたずねて


p.228 「でも、幕府軍なんかアテにしないって局長はいつもいっていたはずです。今夜も新撰組だけで斬りこめばいいじゃありませんか。新撰組はひとりぼっちですよ」

出版社:成美堂出版/発売:2003年/著者:童門冬二

沖田総司落花抄


 

出版社:新人物往来社/発売:1977年/著者:森満喜子

沖田総司 六月は真紅の薔薇(上)


p.41 「つかまえられはしないだろうよ。だがな、命のやりとりなら話は別だ。昔から、剣は身を守るものだといわれているが、それを鵜のみにすることはない。それは達人のいうことで、達人なんていうのは、いつの時代でもひとりかふたりしか、いやしねえ。達人の域に達しないおれたちは、身を守ることよりも、相手を殺すことを考えた方がいい。少なくとも、おれはそう思っている」

pp.127-128 「徳川家に弓を引く?」 と井上源三郎があきれたといわんばかりにいった。 「そうさ」 「そんな馬鹿な考えをもつやつがいるものか」 井上は首をふりふりいった。試衛館の一門は、僕を除けば、すべて多摩に生まれ育った者ばかりである。かれらにあっては、徳川家は絶対の存在といってよかった。ことに井上は八王子千人同心の家柄であり、将軍家は太陽にひとしい存在だった。太陽を消そうなどと考えるものがこの世にあるとは、考えられないことだったろう。

p.235 「土方さん、もしも新選組をぬけて諸国を放浪したいなどといったら、切腹させられるわけですね」 と僕は冗談めかしていった。 「それがお前にとって、どうしても必要だというなら、おれと勇さんで、追手を斬り伏せて、お前の望みどおりにしてやるさ」 副長の表情はきびしかった。 その瞬間、僕は悟ったのだ。新選組と運命を共にするしかないということを。いや、正確にいうなら、師匠や副長と生涯を共にするだろうということを予感したのだ。

出版社:学陽書房/発売:1997年/著者:三好徹

沖田総司 六月は真紅の薔薇(下)


p.23 「はッはッ……」 三十郎は再び豪傑笑いをみせた。そして、 「隊士諸君の参考に供するというのならば、永倉君あたりが、ちょうどよろしいでしょうな」 「なんだと? おれが相手なら勝つ、というのか」 と永倉は、さすがに気色ばんで詰め寄った。 「勝てるとは申しておらぬ。隊士諸君の参考に供することができるであろう、といっているのだ。つまり、総司君相手では、これは稽古にもならぬが、お主や斎藤君となら、槍の利というものが、隊士諸君にものみこんでもらえるということだ」

pp.44-45 「本当に違うんだ。そんなことに腹を立てているんじゃない。養子だの道統だのに、こだわってなんかいない。わたしは、おあいが好きなんだ。労咳であろうとなかろうと、そんなことは関係ないんです」 「お前が関係なくたって、おれにはあるよ。それでは、お光さんに対するおれの立場がなくなってしまう」 「姉がどう考えようと、かまいません。ともかく、そこをどいて下さい」 「総司」 副長はおごそかにいって身構えた。怒りがその構えを殺気立ったものにしていた。 「刀にかけても、そこをどかぬ、というんですか」 「総司、よせ」 「副長としての命令であっても、わたしは諾きませんよ。斬るなら、斬って下さい。構いませんから」 僕は副長の横をすりぬけた。偽りではなく、斬られても構わないと思っていた。

pp.323-324 「左之、そう騒ぐな」 と副長はいった。 「騒いでなんかいねえよ。おれは、伊東の生ちょろい首を欲しいだけだ。とめないでくれ」 「伊東は独りでいるわけじゃない」 「そんなことは百も承知だぜ」 「服部は腕が立つ」 「おれはこわかねえ。おめえは、こわいのか」 副長は怒らなかった。 「あいかわらずだな」 「あいかわらずで悪かったな」 「いや、そうではない。たいていの者は、少しずつ変わってきたが、変わっていないのはお前だけだ。おれは、むしろそのことを喜んでいるんだ」 原田はほめられたと思ったらしく、てれたように白い歯をみせた。

pp.368-369 「沖田先生」 市村は思いつめたようにいった。 「何?」 「江戸へは薩長軍が入ってくることも考えられます。そのさい、ここにおられては、危険この上もありません」 「市村君、わかっている。追い出すのはひどいといったのは冗談だよ」 「はッ」 市村の顔はいっそうあかくなった。 「市村君は土方さんを……」 好きらしいね、といいかけて、言葉をかえた。 「尊敬しているようだね」 「はい」 「あまり無茶をしないように、きみが注意してあげてくれたまえ。これが一番隊組長沖田からのお願いだ」 「光栄です」 市村は目をうるませてうなずいた。

出版社:学陽書房/発売:1997年/著者:三好徹

女たちの新選組 花期花会


 

出版社:河出書房新社/発売:2003年/著者:江宮隆之

影の新撰組 紫苑


 

出版社:集英社/発売:2003年/著者:並木さとし

陽炎 (上)


 

出版社:アスキーメディアワークス/発売:2013年/著者:朝戸夜

陽炎 (下)


 

出版社:アスキーメディアワークス/発売:2013年/著者:朝戸夜

花天新選組 君よいつの日か会おう


 

出版社:大日本図書/発売:2008年/著者:越水利江子

神威の矢 土方歳三 蝦夷討伐奇譚 (上)


 

出版社:中央公論新社/発売:2013年/著者:富樫倫太郎

神威の矢 土方歳三 蝦夷討伐奇譚 (下)


 

出版社:中央公論新社/発売:2013年/著者:富樫倫太郎

鴨川物語 哀惜新選組


pp.89-90 清河方の書いたものには、その威厳と八郎の武力に押されて、一言もさからう者がなかったというが、浪士達は、只々あきれて呆っけにとられて終っていた。 第一取締の役人が幕府の人間だ。みんな今の今まで幕府のために尽くすのだとばかり思い込んでいたら、ここで忽ちその幕府をやっつける事になるかも知れないという。驚くのも当然である。 この様子を早くも土佐の弘瀬健太が探知した。そして、岡田以蔵を見て、 「おい、敵かと思ったら、味方が来たわ」 といった。

p.339 
「新選組というものは、壬生の娘だ、下駄屋の娘だ、というような考えは微塵も無い筈のところだとわたしは信じている。あの女についてそんな事を問題にしているのでなければ、或いはみんなの言う通り、あの女と別れたかも知れない。しかし、今となってはそうは行かない。あの女を死なせて終うのは堪らない」 と切羽詰った声でいった。

pp.368-369 「いよいようるさい事になりはせんか」 「わたしは成る事を望みます。腫物は早く膿を出して終わなくてはならん。土壇場で的がはずれてまごまごするよりは、その方が好都合です」 「叶わんな、君には。すべて算盤はじくんだからね」 「局長ッ」 と土方は叫ぶようにいって目を輝かせた。 「沖田もいる、永倉もいる、原田もいる──が結局は、二人だ。あなたとわたしと二人だ」 土方の瞳の異様にかがやくのを見て近藤は笑った。 「その通り。二人だよ。わかっているよ」

出版社:徳間書店/発売:2003年/著者:子母沢寛

禁じられた敵討


 

出版社:文藝春秋/発売:2003年/著者:中村彰彦

ぐでん流剣士 新選組 藤堂平助


 

出版社:春陽堂書店/発売:1990年/著者:風巻絃一

鬼神新選 (1)京都篇


 

出版社:メディアワークス/発売:2003年/著者:出海まこと

鬼神新選 (2)東京篇


 

出版社:メディアワークス/発売:2004年/著者:出海まこと

鬼神新選 (3)東京篇


 

出版社:メディアワークス/発売:2005年/著者:出海まこと

北の狼 津本陽自選時代小説集


 

出版社:集英社/発売:1989年/著者:津本陽

鞍馬天狗(1) 角兵衛獅子


 

出版社:小学館/発売:2000年/著者:大仏次郎

鞍馬天狗(2) 地獄の門・宗十郎頭巾


 

出版社:小学館/発売:2000年/著者:大仏次郎

鞍馬天狗(3) 新東京絵図


 

出版社:小学館/発売:2000年/著者:大仏次郎

鞍馬天狗(4) 雁のたより


 

出版社:小学館/発売:2000年/著者:大仏次郎

鞍馬天狗(5) 地獄太平記


 

出版社:小学館/発売:2000年/著者:大仏次郎

紅の肖像 土方歳三


 

出版社:文芸社/発売:2004年/著者:遊馬佑

黒猫 沖田総司の死線


 

出版社:朝日新聞出版/発売:2009年/著者:中場利一

慶応四年新選組


 

出版社:河出書房新社/発売:2003年/著者:結束信二

警視庁草紙 (上)


 

出版社:河出書房新社/発売:1994年/著者:山田風太郎

警視庁草紙 (下)


 

出版社:河出書房新社/発売:1994年/著者:山田風太郎

激録新撰組(上)


 

出版社:東京スポーツ新聞社出版部/発売:1977年/著者:原康史

激録新撰組(中)


 

出版社:東京スポーツ新聞社出版部/発売:1977年/著者:原康史

激録新撰組(下)


 

出版社:東京スポーツ新聞社出版部/発売:1977年/著者:原康史

激録新撰組(別巻)


 

出版社:東京スポーツ新聞社出版部/発売:1978年/著者:原康史

月下花伝 時の橋を駆けて


 

出版社:大日本図書/発売:2007年/著者:越水利江子

血録新選組 幕末の疾風児


 

出版社:廣済堂出版/発売:1990年/著者:桜井滋人

剣客物語


 

出版社:文藝春秋/発売:1988年/著者:子母沢寛

剣侠 新選組武勇列伝


 

出版社:学習研究社/発売:2004年/著者:岳真也

拳豪伝


 

出版社:講談社/発売:1988年/著者:津本陽

剣士燃え尽きて死す


 

出版社:徳間書店/発売:2003年/著者:笹沢左保

剣のいのち


p.198 真剣勝負で、突き技をみせる者は、稀であった。逃げる者を追うとき、傷つき動けなくなった者を刺すとき、他人と斬りむすんでいる者を、脇から刺すときの、三つの場合に、かろうじて用いるのみである。 正面から立ちむかってくる敵に、突き技で応じうるのは、よほどの剣の天才であった。おおかたの者は、突けば同時に斬られる相討ちを、無意識におそれるものであった。

出版社:文藝春秋/発売:2010年/著者:津本陽

狂乱の春雪


 

出版社:青松書院/発売:2012年/著者:月海和哉

恋する新選組(1)


 

出版社:角川グループパブリッシング/発売:2009年/著者:越水利江子

恋する新選組(2)


 

出版社:角川グループパブリッシング/発売:2009年/著者:越水利江子

恋する新選組(3)


 

出版社:角川グループパブリッシング/発売:2009年/著者:越水利江子

光風過ぎて


 

出版社:文芸社/発売:2012年/著者:東風ゆずる

黒龍の柩(上)


 

出版社:幻冬舎/発売:2005年/著者:北方謙三

黒龍の柩(下)


 

出版社:幻冬舎/発売:2005年/著者:北方謙三

虎狼は空に 新選組小説


p.30 相手の動きにあわせる脱け技は、合撃ともいわれ、傍眼にはたやすげにみえるが、江戸の数多い撃剣道場でも自在にその技をこなす者は、稀れにしか見かけない。 「かなりの代物だな、あいつらは。たやすくは追い出せる腕っ節ではない。やはりこれだな」 庭樹にもたれていた芹沢が身をおこし、近藤に手刀をうつ真似をみせる。 殿内、家里をのぞく五人の手練は、さほどのことはなさそうであった。あの二人をもし殺るのなら、機をみて一人ずつ倒さねばなるまいと、近藤は考えていた。

p.51 中村は右手へ振りあげた刀身を、風を切ってふりおろす。相手は鈍い動作で受け流そうとしたが、刀を打ちおとされ首筋に刃をうけた。彼は前のめりに膝をつき、刀を枕に立とうともがいたが果たさず倒れ伏した。 首筋から二尺ほども飛散する血が、皿のようなかたちにひろがるのをみて、土方たちは血脈を絶たれたのだと知る。 泥土に膝をつき、とどめをさし終えた中村に、土方たちはどよめき賞賛の声を送った。 「見事な呼吸だ」 「ほんとうに初陣なのか」

pp.59-60 だが新見とは格がちがった。新見は江戸では神道無念流岡田助右衛門の門下で、数千人の相弟子に揉まれてきている。剣の実力においては、数段うえであった。 前川屋敷の道場で竹刀を交えてみて、土方はその事実をたしかめていた。たしかに面、小手、胴、横面、お突きに攻撃範囲を限られた道場の三本勝負では、彼は新見の敵ではなかった。

p.106 「芹沢さんほどの腕になれば、賺し手は通用しない。あの人は構えあって構えなしとうい境地で、相手の動きに応じてその裏をとってゆく。だから、どんな方角から打ちこんでも返されるのさ」

p.106 平山は芹沢ほどの凄味はないが、火焔のように仮借のない剣捌きであった。気が乗らないときや、初心者を相手にするときは、まったく冴えた技をみせなかったが、沖田、土方、永倉など試衛館出身の遣い手と立ちあうとき、隻眼を光らせ狂ったようにあばれまわった。 真剣での打ちこみも人なみはずれて猛烈で、市中見廻りの際の実戦では、彼の斬った相手の血は、二階家の破風まで飛ぶといわれていた。 「あの二人が本気で荒れ狂ったら、手におえませんからねえ。酒で殺しておけば、料理もしやすいってものでさ」 原田は茶を飲みつつ、つぶやいた。

p.124 「お主、汗をかいとるのう。ちと歩いただけでそがいな腑甲斐ない様では、おえんぞ」 野口はいいかえす。 「俺は汗っかきでな。冬でもこの通りだが、気に病んでくれずともよい。百合本仕込みの腕は鈍ってはおらん」 原田は眉間に皺を寄せ、唾を吐いた。

pp.211-212 「敵は大勢いても前の一人だけを斬ればいい。俺の体さえ動くうちは、やられはせぬ。あわてて刃筋をまちがえ、虎徹に刃こぼれさせてはならぬ」 彼は激闘のさなかで、虎徹を傷つけないよう気をくばる余裕をのこしていた。 平素三貫匁もある振り棒振って鍛えた腕と腰が、接戦の場にあって威力をあらわしていた。 「俺はまだ疲れてはいない。充分に力を溜めているぞ」 彼の柔軟な手首から繰りだす返し技が、周囲を取り巻く敵を圧倒し、四、五人を相手に互角の闘いをつづけていた。

p.229 近藤が首をかしげた。 「何だ、宿院良倉の刀も大きな刃こぼれはないぞ」 「うむ、この鬼神丸国重ですね。宿院は達人だからこのくらいの芸当はできるでしょう。しかし武田はそれほどの腕じゃない」 新選組錚々のうちでも豪剣をうたわれる宿院良倉の刀身は、切先からはばき元まで無数の小さな刃こぼれがついていたが、大きな刃こぼれはない。 それは敵と刀身をうちあわせていない証拠であった。宿院ほどの腕になると、敵の打ちこんでくる太刀を、左右に体をかわして避けながら、切り落とすことができる。まったく敵の刀を受けることのない、音無しの剣である。

p.242 沖田が眼にしたのは、床の間を背に太刀を下段に構え、仁王立ちに立っている川島の姿であった。彼の足もとには浴衣の胸もとをはだけた侍が一人、棟打ちをくらって倒れ、もがいていた。 「動くなよ貴様ら、動けば斬りすてるぞ」 川島の重く淀んだ声が威嚇した。 総立ちになった侍たちは、床の間の刀を取りにくることもできず、立ちすくんでいる。 これはたいした役者だと、沖田は川島を見直す思いであった。

出版社:文藝春秋/発売:1989年/著者:津本陽

近藤勇


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2004年/著者:秋山香乃

近藤勇


 

出版社:鱒書房/発売:1990年/著者:井上友一郎

近藤勇 暗殺指令


 

出版社:廣済堂出版/発売:2002年/著者:岳真也

近藤勇白書


p.206 「永倉君……」勇は近づいていき、永倉新八の肩を抱くようにして、「ながい間よく辛抱してくれた。局長として礼をいいます」こころから、いった。これだけで、二人の胸には通じ合うものがある。

出版社:角川書店/発売:2006年/著者:池波正太郎

侍はこわい


 

出版社:光文社/発売:2005年/著者:司馬遼太郎

斬殺集団 私説新選組


 

出版社:青樹社/発売:1979年/著者:宇能鴻一郎

地獄の無明剣 時代小説傑作選


 

出版社:講談社/発売:2004年/編集:日本文芸家協会

獅子の棲む国


 

出版社:文芸社/発売:2002年/著者:秋山香乃

時代小説 読切御免(3)


p.102 十郎は声をあげた。 「敵討ちでござる。相手はすこぶる強豪の者にござれば、御当家の小銃を拝借つかまつる」 銃架から勝手に二挺ばかり掴み取って、表に出た。 総勢六名。全員が討ち死にの気分である。なにしろ新選組の精鋭二十余名が相手だ。

出版社:新潮社/発売:2005年/著者:東郷隆

史伝 新選組


p.164 「つまり、真剣を手にしたら近藤ほどの剣術家はいないということか」 「いるかいないかは誰にも決められんし、どうでもいい。そういう心境は、つまり誰が強いか弱いか、そんなことは決して大切なことではないという悟りのことだが、それは、白刃の下をかいくぐり、血潮の匂いをかぎ、一昼夜たってもまだうなされるような思いをした末に、ようやく到達したものだ」

p.262 甲府へ行って板垣退助の指揮する官軍に敗北したところまでは、多くの証言が残っているのだが、そのあと流山で近藤がどうして官軍に出頭することになったのか、いろいろな証言はあるのだが、新選組の局長だった近藤勇ともあろうものが官軍に降伏した心理について、誰もが納得できる説明になる証言は何もないのである。

出版社:光文社/発売:2009年/著者:三好徹

士道遙かなり 疾風新選組(1)浪士隊京へ


 

出版社:第三文明社/発売:2004年/著者:早乙女貢

士道遙かなり 疾風新選組(2)池田屋斬込み


 

出版社:第三文明社/発売:2004年/著者:早乙女貢

士道遙かなり 疾風新選組(3)京洛の血風


 

出版社:第三文明社/発売:2004年/著者:早乙女貢

士道遙かなり 疾風新選組(4)龍馬を斬れ


 

出版社:第三文明社/発売:2004年/著者:早乙女貢

士道遙かなり 疾風新選組(5)五稜郭に死す


 

出版社:第三文明社/発売:2005年/著者:早乙女貢

死に損ね左之助


 

出版社:新人物往来社/発売:2000年/著者:新宮正春

十五代将軍 沖田総司外伝(上)


 

出版社:徳間書店/発売:1989年/著者:南条範夫

十五代将軍 沖田総司外伝(下)


 

出版社:徳間書店/発売:1989年/著者:南条範夫

小説 沖田総司


 

出版社:秋元書房/発売:1977年/著者:若桜木虔

小説 沖田総司


 

出版社:新人物往来社/発売:1978年/著者:森満喜子

小説 山田方谷の夢


 

出版社:明徳出版社/発売:2011年/著者:野島透

昭和を生きた新選組


 

出版社:経済界/発売:2003年/著者:滝沢中

新・雨月 戊辰戦役朧夜話(上)


 

出版社:徳間書店/発売:2013年/著者:船戸与一

新・雨月 戊辰戦役朧夜話(中)


 

出版社:徳間書店/発売:2013年/著者:船戸与一

新・雨月 戊辰戦役朧夜話(下)


 

出版社:徳間書店/発売:2013年/著者:船戸与一

青春新撰組 BARAGAKI!(1)


 

出版社:角川書店/発売:1996年/著者:秋月こお

青春新撰組 BARAGAKI!(2)


 

出版社:角川書店/発売:1997年/著者:秋月こお

誠凜の月 京都新撰組異聞


 

出版社:文芸社/発売:2014年/著者:永島奈津子

青狼さまよう 時光の隊士


 

出版社:角川書店/発売:2004年/著者:槇ありさ

芹沢鴨 死出の鐔


 

出版社:PHP研究所/発売:1995年/著者:丹波元

全一冊 小説 新撰組


p.112 「あのねえ」 芹沢は顔をあげた。 「近藤さん、おれはあんたを尊敬しているんだ。それはあんたがお世辞をいわんからだ。おれにお世辞なんかいうと落胆するぞ」 「お世辞ではありません、実にうまい。どこの川ですか」

p.323 「この前もいったはずだ。おれは、きさまのオドシなんかにのらない。なぜのらないか、きさまのようなドブネズミにはわかるまい。いいか、おれは新撰組なんだ、たとえどんなことがあろうと、おれは死ぬまで新撰組なんだ」 わかったか、といいながら松原はさらに前に出てきた。殺意が顔中にみなぎっていた。

出版社:集英社/発売:2003年/著者:童門冬二

戦士の賦 土方歳三の生と死(上)


p.38 (たった十両足らずの金で、下手をすると、命がけの仕事になりかねないのに) と歳三は心の中で呟いた。 何かしら情けない気がしないでもなかった。 だが、江戸に残っていても、何か新しいことがあるとも思えなかった。 年があけて、歳三は三十歳になっている。いまもって妻を迎えることさえもできないでいるのだ。 (梅の花 一輪咲いても……) そのとき、下の句が自然にうかんできた。 梅の花 一輪咲くも 梅は梅 (下らねえ) 歳三は自嘲した。ひどく切なかった。

p.137 「日にちは、任せるとのことだ。都合のいい夜を選べ、ともいわれた。それから、酒癖の悪い者がいるようだが、面倒は起こさぬように、ともな」 「殺れ、ということらしいな」 「そう思ったよ」 「では、手筈はおれに任してくれ」 「待て、その前に、やっておかねばならんことがある。芹沢はそのあとだ。芹沢を始末しても、新見が残っていては、面倒なことになるぞ」 「それもご内意かね?」 「いや。おれの考えだ」 と近藤はきっぱりといった。 歳三は、あらたまった思いで、近藤を見た。京へきて半年であるが、近藤は一回りも二回りも巨きくなったようであった。

pp.222-223 結果的に、敵の数は三十人ほどだったが、はじめは五十人はいるだろう、とみられた。そこへ近藤と沖田は斬り込んだのである。豪胆を通りこした行為だった。 終わってから考えれば、狭い屋内での戦いだから、三十人を一度に相手とするわけではない。また、闇の中での斬合いでは、多人数は必ずしも有利ではない。むしろ、敵方には同士討ちもあっただろう。表階段と裏階段の二手に分かれた近藤と沖田の方が、動くものすべてが敵とみなせる有利さがある。 だが、それは終わってからいえることなのだ。 たった二人で、何十人もの敵に斬り込むことに、ためらわないものがいるだろうか。誰だって、躊躇するはずである。 近藤も沖田もそれを平然とやってのけた。

p.280 「副長、何かご用でしょうか」 「用というほどではないが、伊東君の評判はどうだ?」 「お気に入らないかもしれませんが、上々です」 「西本願寺への引越しについては、伊東はどういっている?」 「ご自分の考えは口に出していません。近藤局長のお決めになることで、われわれの口出しすることではない、と申しております」 「用心深い男だな」 と歳三はいった。 島田は、無言を保った。内心では歳三の言葉に同感なのだろうが、島田はいつの場合でも自分から意見をいうことをしなかった。用心深さという点では、島田こそが局中第一というべきだったろう。

出版社:集英社/発売:1993年/著者:三好徹

戦士の賦 土方歳三の生と死(下)


pp.30-31 「おれは、長州人に対しては、ある意味で感心しているのだ。あの連中は、はじめから尊王討幕をとなえて動いてきた。そのことのために、多くの長州人が死んでいる。つまりは命がけで戦ってきた」 「うむ」 近藤はうなずいた。新選組に斬られた浪士のうち、もっとも多いのは長州系のものだったろう。 「しかるに、薩摩はどうだ? やつらは蛤御門の戦いのときにこそ死んでいるが、あの戦いでは、会津も桑名も戦死者を出しているから、やつらだけが特別だったわけではなかった。しかし、それ以外で、長州人のように犬ころのように死んだものがいるかね? おれたちが市中を巡察しているときだって、薩摩ことばを喋るやつには、手を出さなかった。会津と同盟しているという理由からだった。いつぞや、伏見奉行書が坂本を捕え損じたのも、薩摩藩士と名乗られたために、ついひるんだからだ。薩摩というのは、狡いんだよ。もっともらしい顔をして、つねに有利な方につく。そして、いったん形勢非となれば、平気で裏切るんだ。おれは、そういうやつを許せない。新選組の隊旗には、誠の一字を染め上げている。やつらには、誠がない」 と歳三は一気に喋った。

出版社:集英社/発売:1993年/著者:三好徹

戦塵北に果つ 土方歳三戊辰戦始末


 

出版社:学研パブリッシング/発売:2010年/著者:甲斐原康

旋風伝 レラ=シウ(1)


 

出版社:ソフトバンククリエイティブ/発売:2006年/著者:朝松健

旋風伝 レラ=シウ(2)


 

出版社:ソフトバンククリエイティブ/発売:2006年/著者:朝松健

旋風伝 レラ=シウ(3)


 

出版社:ソフトバンククリエイティブ/発売:2006年/著者:朝松健

千両花嫁 とびきり屋見立て帖


 

出版社:文藝春秋/発売:2010年/著者:山本兼一

戦国と幕末


p.193 日清戦争が始まったとき、当時、五十六歳になっていた新八は、 「抜刀隊の一員として従軍させていただきたい」 と、志願したそうである。 明治政府は、しかし、これを取りあげなかった。 新八は、せがれの義太郎に、 「もと新選組に手をかしてもらったとあっちゃあ、薩長の連中も面目まるつぶれというわけかえ」 こういって苦笑した。

出版社:角川書店/発売:2006年/著者:池波正太郎

総司還らず


 

出版社:ワンツーマガジン社/発売:2008年/著者:えとう乱星

総司残英抄


 

出版社:中央公論新社/発売:2003年/著者:戸部新十郎

総司はひとり


p.170 「軍法じゃまに合わぬ。規範はおれらが作り出す。それによって、だれもかれも縛りつける」 「芹沢さんを、ですか」 「差し当たっては、そうなる。が、おれも、勇さんも、おまえも縛られる」 「えらいことどすな」 総司は京弁を使ってみた。 歳三はしかし、気にも留めていない。

p.187 「乱暴がいいというのかね?」 「よくはないでしょうが、新選組は密偵ではない。よきにつけあしきにつけ、存在をまず天下に知らすことが必要でしょう。新選組は怖い、乱暴だ、そう思わせることです。ほかになにがありますか。家門も金もない。無法であっても、力は力ですよ」 総司は自らの論に少し照れた。

p.271 「さあ、行こうぜ」 源三郎は総司の思い入れに斟酌なく、引き方に声をかける。その車のあとを歩む姿が、いくぶんガニ股ふうに見える。 ──どう見ても、多摩の百姓だぜ。 総司は噴き出した。一瞬、想った甘い音色も幻も、消えている。滑稽だが、篤実な男の汗が滲んでいるようだ。

p.314 「近藤さんのことをいわれると、どうも困るのだ」 山南はにんまり笑った。白い豊かな頬に、えくぼが出る。 「あの人は好い男だ。あの人が邪気なく、篤実に動いているのを見ると、論の善悪はどこかへ消えてしまう。近藤勇という男の動き自体、正義だと思えてくる」 「それが新選組でしょう」 「とはかぎらぬ。いろいろな男がいる。狐のようなやつもいる」

出版社:中央公論新社/発売:2002年/著者:戸部新十郎

総司 炎の如く


 

出版社:文藝春秋/発売:2008年/著者:秋山香乃

完四郎広目手控 不惑剣


 

出版社:集英社/発売:2011年/著者:高橋克彦

空の色


 

出版社:文芸社/発売:2002年/著者:三平訓子

天を覆う瞼 沖田総司異譚


 

出版社:文芸社/発売:2003年/著者:真壁沙瑛子

探偵沖田総司


 

出版社:毎日新聞社/発売:2003年/著者:加野厚志

地図


 

出版社:新潮社/発売:2009年/著者:太宰治

地虫鳴く 新選組裏表録


 

出版社:集英社/発売:2010年/著者:木内昇

諜報新撰組 風の宿り 源さんの事件簿


 

出版社:幻冬舎/発売:2011年/著者:秋山香乃

定本沖田総司 おもかげ抄


 

出版社:新人物往来社/発売:1975年/著者:森満喜子

独白新選組 隊士たちのつぶやき


 

出版社:サンライズ出版/発売:2014年/著者:松本匡代

歳三からの伝言


p.41 「死ね。新選組の男」 「手前だってそうだ」 「何だと」 「手前だって、新選組の篠原でなけりゃ、薩摩を頼っていったところで火付けや押込強盗をさせられていたぜ」 「黙れ」 「新選組の篠原だったから、ちやほやされたのだ」

p.148 「怖くなかったといえば嘘になります。三条大橋で土佐藩士が長刀をふりかぶって駆けて来た時も、天満屋で十津川藩士が抜き打ちに斬りつけてきた時も、一瞬、体がすくみました。でも、わたしは逃げまいと思った。逃げては、そこまで歩いてきた道を自分で消すことになる。そんなことだけはしたくなかったのです」 歳三は、あらためて勘吾を見た。やはりおとなしげな顔立ちだった。

p.159 「ずいぶんな脅しだな。俺は徳川の社稷を守ろうとしているのだぜ」 「俺もそうだった。が、今の俺は誰よりも近藤さんを助けたい」 「もったいねえ男だな」 勝は、机からはなれた。 「それだけの知恵と度胸を、近藤一人のために使っちまおうってんだから」

p.214 「何をしやあがる。離せ」 「離しません」 島田魁は、歳三の手をとって自分の肩にかけ、うむを言わさずに背負った。 「よせ、みっともねえ」 「みっともなくても、副長に死なれては困るんです。東照大権現の旗の下に集まった者が皆、困るんです」

p.220 だが、寒さも痛みもすぐに忘れた。霙の降るぬかるみを、手に足駄を持って走ってくる男達がいたのである。先頭の痩せぎすの男は一足先に会津城下へ入った、中島登、その横にがっしりした体格の男がいた。斎藤一だった。二人のうしろから駆けてくる小柄な男は蟻通勘吾、大柄な男は立川主税にちがいなかった。 目頭が熱くなって、歳三は、駕籠へもぐってブランケットを頭からかぶった。 「ばかやろう。どうせ、そっちへ行くんだ。駆けてくるこたあねえや」 低声で毒づいたが、ぬかるみを裸足で駆けてくる音はたちまち近づいてきた。 「副長の足なら、薩軍の弾くらいはじき返すと思っていましたが」 憎まれ口は、斎藤一だろう。冗談とも本気ともつかぬ顔で言っているにちがいない。 「うるせえ」

pp.226-227 歳三は短く笑った。 「お前がどうして山口二郎という名に変えたのか、考えていたのよ」 「別に。強いて言えば、一という名がいやだったのですかね。柱や壁の傷まで、俺の名に見える」 「なるほど。俺は、爺むさい名前だからいやになったのかと思った」 「安心しましたよ。小笠原公はじめ、会津へこられた方は元気がないのですが、副長には憎まれ口をきく元気がある」

出版社:講談社/発売:2004年/著者:北原亞以子

歳三と龍馬 幕末・維新の青春譜


 

出版社:集英社/発売:2003年/著者:菊地明、他

歳三の首


 

出版社:学研パブリッシング/発売:2011年/著者:藤井邦夫

歳三の写真


 

出版社:新人物往来社/発売:2004年/著者:草森紳一

歳三奔る 新選組最後の戦い


p.176 「新選組だからこそ甲州にいけば甲府城の勤番侍や八王子の千人同心、それに武田の浪人たちを糾合できるかも知れない、ってことだよ。もしこの組織が出来上がれば、これは遊撃隊なんぞとは比べものにならないほどの組織になるだろうね。いずれはこの組織に幕府の近代装備をもって鳴る伝習隊をも合同させれば、幕府の新しい兵力として使えるかも知れない」 土方は、勝の言葉を聞いて「あっ」と声を上げそうになった。 「近藤さんにも言ったことだが、甲府に赴いても積極的に官軍と戦ってほしくない、というのはそのためさ。強力な兵力として温存し、官軍への威嚇にしたいのさ。それが新選組を使う一番の理由なんだ」

p.191 江戸城から戻った近藤は、土方の変容を見て、 「歳、どうした? 官軍にかぶれたか?」 明るくそう言っただけであった。 土方は、黙って頷くだけだった。

出版社:祥伝社/発売:2001年/著者:江宮隆之

歳三 往きてまた


 

出版社:文芸社/発売:2002年/著者:秋山香乃

逃げ水(1)


 

出版社:嶋中書店/発売:2005年/著者:子母沢寛

逃げ水(2)


 

出版社:嶋中書店/発売:2005年/著者:子母沢寛

虹の生涯 新選組義勇伝(上)


p.257 松田重助の重い剣を受けた弾みに、永倉の愛刀手柄山氏繁の鋩子が折れた。 避ければ藤堂が据物斬りの素材となる。身を楯にしても盟友を見捨てることはできない。 永倉は鋩子の折れた氏繁で藤堂を庇った。いまや傷ついた友を助けなければならないという責務が永倉の気持ちを支え、彼を生かしていた。

出版社:中央公論新社/発売:2008年/著者:森村誠一

虹の生涯 新選組義勇伝(下)


p.343 近代兵器の粋を集めた甲鉄といえども、それを扱うのは人間である。そして、彼らは近代兵器に頼りきって、武士の武芸を忘れている。白兵戦に持ち込めば断然新選組の土俵である。 「久しぶりに天然理心流の本領を見せてやる」 土方は身体の芯から武者震いをおぼえていた。

出版社:中央公論新社/発売:2008年/著者:森村誠一

女人新選組


 

出版社:東京文芸社/発売:1972年/著者:陣出達朗

血煙り新選組 人間の剣 幕末維新編(1)


p.204 「帝の行幸を中止させまいらす以外にない」 「帝の……、中止……」 永倉が言葉を途中で呑んだ。 「そうだ。いまとなってはそれ以外にきゃつらの暴挙をとめるすべはない。いや帝さえ、行幸をご中止あそばされれば、きゃつらがなにをしようと糸の切れた凧のようなもの、勝手にどこへなりと飛んで行けばよい」 いま山南には中山忠光を中核とする陰謀がはっきりと見えていた。

出版社:中央公論新社/発売:2004年/著者:森村誠一

無銘剣対狂剣 人間の剣 幕末維新編(2)


p.132 「言うてみい。聞き捨てならねば」 松原は肩をそびやかした。蛤御門の変のとき、弁慶の再来をおもわせる坊主頭に大薙刀を手にして、「方今の形勢累卵の如し、天下の有志これを知るや否や」と朗々と節をつけて叫び、彼我を圧倒しただけあって、肉薄しての示威にはいっそうの迫力がある。

pp.179-180 大石は隊内で“狂剣”と渾名されている。いったん血を見ると狂い立って手がつけられなくなる。「狂犬」に掛けていることはもちろんである。殺しを心から楽しんでいる。

pp.261-262 「さぞご無念のことどしたでしょう」 弁之丞が彼の心の裡を想って言葉に詰まると、 「これも武士の習いだ。潔く腹をかっさばくのみよ」 とむしろ弁之丞を励ますように言った。 「私が仇を討ったけます」 弁之丞の言葉に田中は、あははと笑って、 「お主の志は忝い。だが拙者に仇などおらぬよ。死生はすべて武士道にあり、だれも怨むことはない」

出版社:中央公論新社/発売:2004年/著者:森村誠一

新選組残夢剣 人間の剣 幕末維新編(3)


p.23 「だれか落とし主はいないか」 見まわしたが、隊士に手首を切り落とされた者はいない。後日、竹中与一のものとわかった。だれが斬ったのか判然としない。 「そそっかしいやつがいるものだな。大事な手首を落としていくとは」 大石は不敵に笑うと、かたわらに転がっていた刺身皿の上にひょいと乗せた。

出版社:中央公論新社/発売:2004年/著者:森村誠一

忍法新選組


p.178 「そうではない。むしろかたじけないと思う。が、天下動乱とは、古来そうしたものだ。働くべき者が働かず、どこのだれともわからぬ者の躍動がある」 「全く。その結果、上下の交替、道統の転位というものが生まれるのでござろう」 「さよう。そのゆえに、徳川家を守る者は徳川家の直参でのうて、もっと別の者であろう」 「全く。たとえば……」 「心当たりは?」 「名もない道場主、近藤勇という男」

出版社:光文社/発売:2004年/著者:戸部新十郎

人間 土方歳三 新選組副長秘め語り


 

出版社:舞字社/発売:2005年/著者:村瀬彰吾

幕末


p.138 中井は間合をはかりぞこねた。 「わっ」 と立ちあがった三浦の面上を割るにいたらず、眼の下の肉をわずかに裂いた。 と、そのときが中井の最期だった。三浦の横にいた新選組三番隊長斎藤一が、ほとんど同時に中井に抜き打ちをあびせ、左頸筋から胸にかけてざくりと割った。

p.473 大和櫛羅一万石の永井信濃守、大和柳生一万石の柳生但馬守、大和柳本一万石の織田筑前守で、この三藩の兵が松屋町筋まわりを厳重に警戒することになった。 討入りは、新選組の万太郎狐。

出版社:文藝春秋/発売:2001年/著者:司馬遼太郎

幕末暗殺剣 龍馬と総司


 

出版社:講談社/発売:2009年/著者:加野厚志

幕末維新傑作選 最後の武士道


p.184 同志は七人であったが、新選組隊士は四十数人で襲いかかってきた。乱闘のあげく、服部武雄、毛内有之介、藤堂平助の三人が討死にし、他の四人が逃げた。 弥兵衛は生きのこった同志らとともに、復讐を誓い、近藤をつけ狙う。 復讐の機会は、ひと月後の十二月十八日にめぐってきた。

出版社:集英社/発売:2010年/著者:津本陽

幕末鬼骨伝


 

出版社:富士見書房/発売:1993年/著者:広瀬仁紀

幕末奇談


 

出版社:文藝春秋/発売:1989年/著者:子母沢寛

幕末剣客伝


 

出版社:双葉社/発売:2009年/著者:津本陽

幕末剣士伝


 

出版社:河出書房新社/発売:1981年/著者:船山馨

幕末剣豪人斬り異聞 佐幕篇


 

出版社:アスキー/発売:1997年/編集:菊池仁

幕府検死官 玄庵 血闘


 

出版社:文芸社/発売:2011年/著者:加野厚志

幕末屍軍団


 

出版社:講談社/発売:2010年/著者:菊地秀行

幕末銃姫伝 京の風 会津の花


 

出版社:中央公論新社/発売:2012年/著者:藤本ひとみ

幕末純情伝 龍馬を斬った女


 

出版社:角川書店/発売:1990年/著者:つかこうへい

幕末新選組


p.251 「まあききなさいよ。いいかね、いえば、新選組はもともと分が悪くなった御公儀の力を盛り返すがために生まれたもんだ。何を今さら、あわてるこたァねえ。はじめっから分が悪いんだからね」

出版社:文藝春秋/発売:2004年/著者:池波正太郎

幕末テロリスト列伝


p.96 「私共の親類に桝屋喜右衛門と申す者がおりますが、養子の身で、一向に家業に精を出さず、家を外にして出歩き、いかがわしい者と交わり、時には刀を差したりして、意見も聞き入れず、親類一同ホトホト困っております。何卒、喜右衛門を教(戒)論して頂きたい」 という訴えがあった。 新選組といえば鬼のような殺戮集団と書く物がいるが、こうした家庭内の問題まで持ち込まれていたところをみると、治安だけでなく五人組や町役人的な信頼を得ていたことがわかる。

p.125 「いや、その懸念は、私にもあった。ところが今日、近藤に会ってみると、思いのほかに人当たりもやわらかく、話のわかる男なのだ。あの男の統率する集団ならば、決して無頼の徒の集まり、といったものではあるまい。私は近藤を信じて京都へ行くことにするよ」

p.155 近藤はみずから政治の場へ出てゆくが、それは幕藩体制に望まれてのことでもあった。攘夷派の反対を押し切って兵庫開港を強行した幕府目付の原市之進が暗殺されたとき、公武合体派の賀陽宮は、会津藩の秋月悌次郎をまねき、原の後任に近藤勇はどうか、と伝えたらしい。政治家としての近藤の名声と力量をあらわすエピソードといえよう。

出版社:講談社/発売:2004年/編者:歴史を旅する会

幕末の暗殺者


 

出版社:現代書房/発売:1967年/著者:船山馨

幕末妖人伝 時代短篇選集1


 

出版社:小学館/発売:2013年/著者:山田風太郎

派遣刺客


p.136 近藤や土方は池田屋を踏まえて、新選組を大名として独立させたいと意識するようになった。滔々たる時代の流れの中で、「池田屋」などは漂流物の断片にすぎない。その破片にすがって時代に乗ったような、いい気になっている時代錯誤に、近藤らは気づいていない。 土方は多少気づいているようであるが、漂流物であろうと、断片であろうと、新選組を押し上げるためには、なんでも利用する貪欲な意思があった。

出版社:朝日新聞出版/発売:2009年/著者:森村誠一

箱館売ります 幕末ガルトネル事件異聞


 

出版社:実業之日本社/発売:2004年/著者:富樫倫太郎

花あかり・沖田総司慕情


 

出版社:新人物往来社/発売:1992年/著者:三輪佳子

バラガキ 土方歳三青春譜


p.126 「みんなから、憎まれますよ」 沖田が石をひとつ拾い、遠くへと投げつけた。 飛んでいった石のほうを向いたまま、歳三に顔を見せようとしない。 「でもアレですよ、わたしはどんなことがあっても」 沖田はまたひとつ、石を拾い上げた。 「ずっと土方さんの味方ですから」 今度はさっきよりもっと遠くへ、沖田は石を投げつけた。

pp.143-144 「総司よォ、オレァいろいろ考えたけど、めんどくさくっていけねェや」 オレはオレで好きにやるさ、ついてくる奴だけついて来い。歳三は芹沢をにらんだまま言った。 「ダレに言っておる、キサマ」 芹沢は言った。 「総司に、だよ」 「総司?」 「わたしのことですよ」 芹沢の真うしろに沖田がピタリとついていた。息が首にかかるほどの距離に殺気がいた。

出版社:講談社/発売:2003年/著者:中場利一

原田左之助 新選組の快男児


 

出版社:文芸社/発売:2004年/著者:松本攸吾

遙かなる沖田総司


 

出版社:新人物往来社/発売:1979年/著者:森満喜子

美剣士沖田総司


 

出版社:飛天出版/発売:1996年/著者:海之森凛

土方歳三


 

出版社:新人物往来社/発売:2004年/著者:大内美予子

土方歳三


 

出版社:学習研究社/発売:2006年/著者:岳真也

土方歳三 見参


 

出版社:東洋書院/発売:2000年/著者:長谷川つとむ

土方歳三散華


 

出版社:小学館/発売:2001年/著者:広瀬仁紀

土方歳三 修羅となりて北へ


 

出版社:学習研究社/発売:2002年/著者:岳真也

土方歳三の鬼謀(1)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2000年/著者:柘植久慶

土方歳三の鬼謀(2)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2000年/著者:柘植久慶

土方歳三の鬼謀(3)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2000年/著者:柘植久慶

土方歳三秘話


 

出版社:新人物往来社/発売:1978年/著者:赤間倭子

土方歳三 北海の剣


 

出版社:青樹社/発売:1998年/著者:松井永人

土方歳三、参る! 幻説五稜郭


 

出版社:光風社出版/発売:1993年/著者:辻真先

土方歳三 物語と史蹟をたずねて


 

出版社:成美堂出版/発売:1985年/著者:童門冬二

土方歳三 われ天空にありて


 

出版社:明窓出版/発売:2010/著者:七浜凪

飛騨忍法帖


 

出版社:文藝春秋/発売:2003/著者:山田風太郎

火取虫


pp.59-60 「それでも、近づいてみたかったのさ。火なんて熱くて近づけるものじゃない。それでも、近づいてみたかったんだ。毎日、毎日、ふらふら飛び回ってるだけじゃ、やってられなかったんだろうよ」 きつは歳三を黙って見ている。 「あいつは、飛び込みたくって、望みどおり、飛び込んでいくことができたんだよ」 歳三は提灯の笠を広げて、立ち上がった。 「羨ましい限りだ」

出版社:集英社/発売:1995年/著者:絹川亜希子、坂本眞一

漂流巌流島


p.174 新選組局長近藤勇、この年三十一歳。普段の声はずいぶんと細く、低かったが、いざ剣を取っての勝負となるとその掛け声の鋭いこと凄まじく、相手の腹の底までぴいんと響くほどだったという。この時の近藤の声はまさに細く低く鋭く、皆の胸に力強く響いた。

p.190 確かに肺結核が発症するのはもう少し後年だともいいますね。最近の説だと、山南敬助の愛人だった遊女明里、彼女を看病していて感染したんじゃないかという話もあります。沖田は山南に可愛がられてましたから、あるいは……

p.237 「近藤勇は熱烈な佐幕派だ。徳川将軍家を自分たちの主君と考えていた。それと同時に攘夷論者でもあった。日本を守るためには攘夷しかないと信じている。ところが、あいにくと幕府には攘夷を実行する意思がない。これが近藤の苦衷だ。この矛盾を解消する方法は二つに一つ。近藤が攘夷思想を捨てるか、そうでないなら──何としても幕府に攘夷を実行してもらうかだ」 「──」 「といって、近藤ごときが嘆願したところで幕府が動くはずもない。そこで彼は考えた。幕府の腰が半端でなしに重くても、尻に火がつけば動くしかなくなる。まさか近藤自身が火をつけることはできない。だから、分かっていて長州を焚きつけたのさ。こっぴどく叩きのめして、実力行使に踏み切るように挑発してやろうと企てた。そんなところへ舞い込んできた絶好の機会が──池田屋だった」

出版社:東京創元社/発売:2010年/著者:高井忍

風魔外伝 新選組忍法帖 幕末戦争の裏面に忍び軍団の死闘


 

出版社:白石書店/発売:2000年/著者:長谷川彰

武州にねむれ 幻影箱館戦争


 

出版社:新風舎/発売:1999年/著者:刀能京子

冬のつばめ 新選組外伝・京都町奉行所同心日記


p.182 「山南先生に大仏どの、ここは意地でも身どもにまかせてもらいますぞ。止めだていたされれば、刀にかけてもともうさねば仕方ありませんなあ」 三十郎の一言で、輩下の隊士たちが、伝七郎と敬助のまわりをぐるっととり囲んだ。

出版社:中央公論新社/発売:2010年/著者:澤田ふじ子

降りしきる


 

出版社:講談社/発売:1995年/著者:北原亞以子

北辰挽歌 土方歳三 海に戦う


 

出版社:学習研究社/発売:2004年/著者:辻真先

誇り高き剣客 土方歳三


 

出版社:新人物往来社/発売:2004年/著者:大蔵園美

戊辰繚乱


 

出版社:新潮社/発売:2013年/著者:天野純希

魔剣・新選組 幕末の風雲児


 

出版社:廣済堂出版/発売:1989年/著者:桜井滋人

誠の旗がゆく 新選組傑作選


 

出版社:集英社/発売:2003年/著者:池波正太郎、他

誠の道 中島登


 

出版社:新人物往来社/発売:2004年/著者:神月明菜

誠を生きた男たち 歳三と総司


 

出版社:復刊ドットコム/発売:2012年/著者:河原総

松前の花 土方歳三 蝦夷血風録(上)


 

出版社:中央公論新社/発売:2013年/著者:富樫倫太郎

松前の花 土方歳三 蝦夷血風録(下)


 

出版社:中央公論新社/発売:2013年/著者:富樫倫太郎

密偵


 

出版社:幻冬舎/発売:2010年/著者:秋山香乃

壬生義士伝(上)


p.433 「俺は死にたいね。いつ死んでもかまわぬ。斬ってくれる奴がいないから生きているんだ」水溜りで下駄を拾いながら、吉村はふしぎそうにわしを見つめた。「私はちがいます。死にたくないから、人を斬ります」

出版社:文藝春秋/発売:2002年/著者:浅田次郎

壬生義士伝(下)


p.69 「新選組隊士吉村貫一郎、徳川の殿軍ばお務め申っす。一天万乗の天皇様に弓引くつもりはござらねども、拙者は義のために戦ばせねばなり申さん。お相手いたす」 横なぐりの雪が、だんだら染めの隊服を翻しておった。それはわしが後にも先にもこの世で初めて見た、まことの侍の姿じゃった。

出版社:文藝春秋/発売:2002年/著者:浅田次郎

壬生の女たち


 

出版社:徳間書店/発売:1985年/著者:藤本義一

壬生烈風 幕末京都守護職始末


 

出版社:中央公論新社/発売:2012年/著者:藤本ひとみ

みぶろ


pp.39-40 「ぶはっ!」 そんな声とも音ともつかぬものが土方の口から洩れ、いきなり両の鼻の穴からハナ水を飛び出させた。 「ひゃっ、ばっちい!」

出版社:ベストセラーズ/発売:2004年/著者:奈良谷隆

壬生浪伝(1)


 

出版社:小学館/発売:2001年/著者:秋月こお

壬生浪伝(2)


 

出版社:小学館/発売:2001年/著者:秋月こお

壬生浪伝(3)


 

出版社:小学館/発売:2001年/著者:秋月こお

壬生浪伝 誠の抄


 

出版社:文芸社/発売:2003年/著者:富川幸

無 新撰組が最も恐れた男


 

出版社:新風舎/発売:2005年/著者:加藤正樹

明治新選組


p.28 その時の野村利三郎の姿は忘れられるものではない。野村は見えぬ相手に殴りつけられたように腰をよろめかせて後退り、後ろの手すりに背中を打ちつけた。そして刀を振り上げたまま手すりを軸に一回転して、海に落ちて行ったのだ。首を下にしてこちらに顔を向けた時、その胸からは血が酒樽の栓を落としたように噴き出していた。一瞬逆さづりになった時の野村の眼が、おれを見たような気がしてならないのだ。相馬よ、どうしたのだ、一緒に死ぬ約束だったではないか──野村の眼は、たしかにおれにそういっていた……

出版社:角川書店/発売:1993年/著者:中村彰彦

明治無頼伝


 

出版社:角川書店/発売:2000年/著者:中村彰彦

燃えよ剣(上)


p.249 「斬る」「斬るか、歳」「しかしそのときは私の、土方歳三の生涯もおわる。あんたの死体のそばで腹を切って死ぬ。総司も死ぬだろう。天然理心流も新撰組も、そのときが最後になる。──近藤さん」

出版社:新潮社/発売:1972年/著者:司馬遼太郎

燃えよ剣(下)


p.86 「男の一生というものは」 と、歳三はさらにいう。 「美しさを作るためのものだ、自分の。そう信じている」 「私も」 と、沖田はあかるくいった。 「命のあるかぎり、土方さんに、ついてゆきます」

p.351 榎本は、そのあと、京の新選組のころのことを聞いた。 歳三は、 「往事茫々です」 といったきりで、多くを語らず、ただ近藤のことを二、三話し、 「英雄というべき男でした」 といった。 榎本はうなずいた。

出版社:新潮社/発売:1972年/著者:司馬遼太郎

物語 新選組隊士悲話


 

出版社:新人物往来社/発売:1988年/著者:北原亞以子

夕映え剣士 小説・沖田総司


 

出版社:春陽堂書店/発売:1993年/著者:菅野国春

夕焼け 土方歳三はゆく


 

出版社:新人物往来社/発売:1987年/著者:松本匡代

夜を走る トラブル短篇集


 

出版社:角川書店/発売:2006年/著者:筒井康隆

洛西壬生村 八木一族と新選組


p.28 芹沢には芹沢なりの考えがあったのだ、芹沢は天狗党などの荒っぽい徒党に参加して立ち回った経験が豊かで、粗暴な浪士集団の中で頭角を現わすには、桁外れの狂暴さを発揮して、並みの「悪」を威圧するに限ることをよく知っていた。芹沢の振る舞いは計算されつくしたものであった。

pp.37-38 姿が見えなかった土方が現れ、「やあ遅くなって申し訳ない。八木さんと話し込んでいて……」とかなんとかいって芹沢の横に座り込み、遅参の弁明をひとしきりして酒を酌み交わした後、 「お一つ如何ですか」 と近藤に近付いてきて、芹沢達の宴の盛り上がりを見極めつつ、 「ユウさんやるか」 と鋭い視線を近藤に投げ掛けてきた。 「やるきゃないなあトシ」 と近藤は応じた。  文久三年三月二十五日の夜。殿内義雄、四条大橋の上で惨殺される。

p.103 「平間先生、先生の言い付けで糸里さんの処に届けました簪の代金、早く払って下さい」 と、平間に督促をし出した。 「そ、そんなに大きな声を出すなよ新吉」 と云いながら、平間は新吉を八木邸台所の片隅に連れていき、小銭を渡しているようであった。 新選組の隊士たちと新吉との間で、こういったやり取りが繰り返されるのは、日常茶飯事で、側に居たもの達も、この光景を、苦笑しながら見守っていた。 が、この間に、平間と新吉の間で、 「今夜決行、手配頼む」 「承知致しました」 との意思確認が行われていた。

出版社:日本文学館/発売:2003年/著者:橋本隆

六道四生(上)


 

出版社:文芸社/発売:2012年/著者:勢九二五

六道四生(下)


 

出版社:文芸社/発売:2012年/著者:勢九二五

龍馬外伝


 

出版社:文芸社/発売:2012年/著者:村雨悟朗

輪違屋糸里(上)


p.84 「こないにしてぺろぺろねぶってたら、五郎はんの目ェももういっぺん開かはるかもしれしまへん。近藤先生も言うたはったえ。平山に二つの目ェがあれば、俺もかなわんやろて」 よほど嬉しかったのだろうか、笑わぬ男が苦笑いをして、吉栄の頬を抱き寄せた。 「何を言うか。あの近藤という男は、俺が今まで立ち合うた侍の中では格別の剣客だ。目が三つあっても足らぬわ」

p.127 
あの斎藤一というやつは、剣士ではなく剣そのものだな、と。強い弱いではありませぬ。技とか力とかを越えたどこか遠いところで、あの男はおのれの体と剣がひとつになってしまっている。 そういう侍だからこそ、近藤先生の胸中をわがことのごとくに覗き見ることができたのでしょう。僕らがみな薄気味悪く思うている斎藤を、なぜか先生ひとりが可愛がるわけも、そう考えれば合点が行きまする。

p.267 「わしはあの連中が嫌いではない。近藤は見た通りのわかりやすい男だし、土方は頭がいい。沖田の剣は神業だ。山南は好人物で、井上も原田も藤堂も真正直な男だよ。どいつもこいつも、苦労人のくせに汚れていない」

出版社:文藝春秋/発売:2007年/著者:浅田次郎

輪違屋糸里(下)


p.26 「それァ思い過ごしだぜ、芹沢さん。今までのあんたの苦労は、ほかならぬ土方が一等よく知っている。あんたが調達してくれた金で、俺たちも食ってきたんだからな。

p.71 俺には勇さんの胸のうちが痛えほどわかった。あの人は芹沢さんが好きなんだ。俺たちが夢に見る尊皇攘夷の志士だし、根はけっして悪いやつじゃねえ。それに、貧乏な俺たちを何だかんだと食わしてくれていたのもたしかだった。

p.202 「屯所で月見餅を搗いたのだが、たんと余ってしもうての。滋養になると思うて、胡麻餅ばかりをいただいてきた。目刺は朝飯の残り物だ」 五郎はん、と答える声が咽にからみついて、吉栄は咳いた。体の具合などどこも悪くはないが、涙を咳き偽るほかはなかった。

p.269 しかし次の瞬間にお勝が見たものは、鞘を握り寄せたまま動けぬ永倉と、片膝立ってその頸筋にぴたりと刃を当てた斎藤の動かぬ姿だった。 「上手下手のわからぬ貴公ではあるまい。正眼に構えれば十中八九貴公の勝ちだが、この間合いならば、十中の十、俺は負けぬ」

出版社:文藝春秋/発売:2007年/著者:浅田次郎

我餓狼と化す


出版社:実業之日本社/発売:2012年/著者:東郷隆

SAMURAI 裏切者


出版社:文芸社/発売:2000年/著者:藤原青武

ウエスタン武芸帳(1)異西部の剣士


 

出版社:朝日ソノラマ/発売:1986年/著者:菊地秀行

ウエスタン武芸帳(2)アリゾナ剣銃風


 

出版社:朝日ソノラマ/発売:1987年/著者:菊地秀行

ウエスタン武芸帳(3)無法街決闘伝


 

出版社:朝日ソノラマ/発売:1988年/著者:菊地秀行

裏閻魔


 

出版社:エイ出版社/発売:2011年/著者:中村ふみ

悲歌 「新撰組」殺人事件


 

出版社:里文出版/発売:2011年/著者:北村英明

乙女・新撰組


 

出版社:フランス書院/発売:2008年/著者:みかづき紅月

火星の土方歳三


 

出版社:朝日ソノラマ/発売:2004年/著者:吉岡平

決戦!本能寺 新撰組、参る


 

出版社:ジャイブ/発売:2011年/著者:小太刀右京、華南恋

ゴルフ夜明け前


 

出版社:サンケイ出版/発売:1987年/著者:桂三枝

サバンナゲーム 激動


 

出版社:小学館/発売:2011年/著者:黒井嵐輔

サバンナゲーム 動乱


 

出版社:小学館クリエイティブ/発売:2012年/著者:黒井嵐輔

サラリーマン裏新撰組


 

出版社:講談社/発売:1994年/著者:志茂田景樹

昭和新撰組、空を征く(1)


 

出版社:実業之日本社/発売:2007年/著者:青山智樹

昭和新撰組、空を征く(2)


 

出版社:有楽出版社/発売:2008年/著者:青山智樹

新帝都物語 維新国生み篇(上)


 

出版社:角川書店/発売:2009年/著者:荒俣宏

新帝都物語 維新国生み篇(下)


 

出版社:角川書店/発売:2009年/著者:荒俣宏

刻迷宮(1)


 

出版社:講談社/発売:2006年/著者:高橋克彦

刻迷宮(2)


 

出版社:講談社/発売:2006年/著者:高橋克彦

刻迷宮(3)


 

出版社:講談社/発売:2006年/著者:高橋克彦

刻迷宮(4)


 

出版社:講談社/発売:2006年/著者:高橋克彦

炎の蜃気楼 幕末編 獅子燃える


 

出版社:集英社/発売:2013年/著者:桑原水菜

まぼろし新撰組


 

出版社:角川書店/発売:1992年/著者:栗本薫

夢幻戦記(1)総司地獄変(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1997年/著者:栗本薫

夢幻戦記(2)総司地獄変(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1998年/著者:栗本薫

夢幻戦記(3)総司斬月剣(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1998年/著者:栗本薫

夢幻戦記(4)総司斬月剣(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1998年/著者:栗本薫

夢幻戦記(5)総司夢幻行(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1998年/著者:栗本薫

夢幻戦記(6)総司夢幻行(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1999年/著者:栗本薫

夢幻戦記(7)総司西征譜(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1999年/著者:栗本薫

夢幻戦記(8)総司西征譜(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:1999年/著者:栗本薫

夢幻戦記(9)総司星雲変(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2001年/著者:栗本薫

夢幻戦記(10)総司星雲変(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2001年/著者:栗本薫

夢幻戦記(11)総司乱菊抄(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2002年/著者:栗本薫

夢幻戦記(12)総司乱菊抄(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2003年/著者:栗本薫

夢幻戦記(13)総司紅蓮城(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2003年/著者:栗本薫

夢幻戦記(14)総司紅蓮城(下)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2005年/著者:栗本薫

夢幻戦記(15)総司無明陣(上)


 

出版社:角川春樹事務所/発売:2012年/著者:栗本薫

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